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ワインの帝王も絶賛。スペイン・プリオラートは、大自然が創り出すブドウの楽園。【世界のワイナリー巡り】

今月は世界のシャトーを巡り、ワインの奥深い魅力に触れる旅。フランス・ブルゴーニュ、イタリア・モンタルチーノ、米国・ナパに続く最終回は、知る人ぞ知るスペインの銘醸地・プリオラートへ。特殊な気候と土壌が創り出す卓越したワインは、ワイン界の帝王も唸らせたほど。次に訪れるべき銘醸地として、世界中のワインラバーたちも熱い視線を注ぐ。

プリオラート・ワインの名声を高めた4人衆。

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スペインワインと言えばリオハが有名だが、リオハと並んで最高格付けのDOCa(特選原産地呼称)に認められ、ワイン通の注目を集める産地がプリオラートだ。バルセロナから車で西に2時間ほどのモンサント山脈の南側にあり、畑の多くは急な斜面に位置する。土壌は粘板岩で降雨量が少なく寒暖差が激しいという、ブドウ栽培には恵まれた土地だ。

プリオラートと言えば、ルネ・バルビエ、アルバロ・パラシオス、カルロス・パストラーナ、ホセ・ルイス・ペレスの4人の名醸造家たちを抜きには語れない。彼らは1980年代にこの地でワイン造りを始め、そのクリエイティビティあふれるワインが1991年に市場に紹介されると評論家たちから高く評価され、一躍世界の舞台へと躍り出た。さらに今も現役のアルバロ・パラシオスが造ったガルナッチャ種100%の「レルミタ」が、世界で最も影響力があると言われるワイン評論家のロバート・パーカーから100満点の評価を得たことでも注目を集めた。今もなお4人とその後継者たちは、プリオラートのブドウにこだわったワインを造り続けている。

大自然と共生し、貴重なテロワールを大切に守る。

ルネ・バルビエは、普通なら刈り取ってしまう下草もブドウ畑の一部と考える。

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4人の名醸造家の一人で、今も現役で活躍するルネ・バルビエは、土地の個性であるテロワールに徹底的にこだわり、自然との共生を大切にしている。ブドウの木ばかりでなく、オリーブやワイルドチェリーなどの木々、地表の水分を保つ下草や花粉を運ぶミツバチまで、あらゆる生き物が共生することで豊かな自然が造られ、さらには美味しいブドウを実らせるというと考え、ワイナリー「クロス・モガドール」では有機農業に取り組んでいる。

ワイナリーツアーは、1回最大8名までの予約制。ブドウ畑やセラーの見学に加えて、ワイン4種類のテイスティング付きで約3時間のコースだ。ジャムやハーブ、スパイスなどの混ざり合った複雑なアロマが魅力的なシグニチャーワイン「クロス・モガドール」も、じっくりと堪能することができる。

ルネ・バルビエの息子ルネ2世は、なんと4人衆の一人、ホセ・ルイス・ペレスの娘サラと結婚。サラ(写真下)は夫をサポートしつつ、実父のワイナリー「マス・マルティネ」を引き継ぎ、プリオラートのマドンナとして活躍中だ。

クロス・モガドール(Clos Mogador, SL)
Camí Manyetes, s/n. 43737 Gratallops, Spain
Tel./+34-977-839-171
料金/1人35ユーロ(ワインテイスティング4種)
http://www.closmogador.com/

マス・マルティネ(Mas Martinet)
Road de Falset a Gratallops, Km 6, 43730 Falset, Spain
Tel./+34-977-27-91-87
https://www.masmartinet.com/

凝縮した旨みを醸し出す、樹齢50年超のブドウ。

樹齢50~70年のブドウからは、円熟した味わいのワインが生まれる。
発酵が終わったワインはフレンチオークの樽で10~15カ月熟成させる。

「クロス・デ・ロバック」は、ルネ・バルビエの知り合いのジャーナリスト、カルロス・パストラーナと醸造学者のマリオナ・ジャルケの夫婦が、1970年代の終わりにプリオラートに移り住み、ワイン造りに取り組んだことに端を発する。樹齢の高いブドウを多く所有し、ガルナッチャ、カリニャン、カベルネ・ソーヴィニヨンも樹齢50年以上が中心だ。枝葉を伸ばそうとする勢いが落ち着いた古木たちは、一心に果実に養分を貯え、それによって旨みの凝縮された高品質のワインが生まれるのだ。

毎日実施しているプライベート・ワインツアーは、パストラーナ&ジャルケのファミリーが、直接案内してくれるというアットホームな雰囲気。樹齢50年から70年のガルナッチャとカリニャンを主体に造られたシグニチャーワイン「クロス・デ・ロバック」の試飲ももちろんOKだ。

クロス・デ・ロバック(Clos de L’Obac)
Camí Manyetes, 43737 Gratallops, Tarragona, Spain.
Tel./+34-977-839-276
https://obac.es/

聖なる山を望む、ワイン愛好家のためのリトリート。

レストランのテラス席は、モンサント山脈の豊かな緑に包まれる。
キリスト教の修道院だった建物をスモールラグジュアリーなホテルにリノベーション。
客室は大きく採られた窓とシンプルでモダンなインテリアが特徴。

今回の滞在におすすめなのが、プリオラートの中心から車で20~30分ほどのモンサントの丘陵地帯に建つ、わずか26室の小さな5つ星ホテル「テラ・ドミニカータ」だ。もともとドミニコ会修道院の建物の一部だったこのブティックホテルは、ブリオラートとモンサントというワインの名産地に囲まれ、まさにワイン愛好家のためのリゾートホテルだ。

ルーフトップのプールやレストランのテラス席からは、“聖なる山”という意味を持つモンサントの美しい緑の山々を見渡すことができる。客室はモダンなインテリアですっきりとまとめられ、カタルーニャの明るい陽の光が差し込む。レストランでは、自然派食材を使った郷土色豊かな料理とともに、プリオラートを中心とした豊富なコレクションの中からセレクトしたワインが味わえる。

テラ・ドミニカータ(Terra Dominicata)
Carretera T-702 Km 13, Morera de Montsant, 43361 Tarragona, Spain
Tel./+34-877-91-22-92
料金/1室1泊(ワインテイスティング付き)350ユーロ~(2018年11月現在)
https://www.terradominicata.com/

Text: Yuka Kumano